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今日,わが国の電力エネルギーのほとんどは火力,原子力発電によりまかなわれています.これらの発電方式は莫大な電力エネルギーを一度に得ることが出来ますが,火力発電は資源の枯渇や環境問題に直面しており,原子力発電はその危険性が問題視されています.そこで新たな代替エネルギーの開発 が求められています.橋本研究室で研究を行っている太陽光発電は,エネルギー源が無尽蔵であります.太陽光→電気の直接変換によりクリーンでサイレントな発電方式であるので,代替エネルギーの一つとして注目されています.
太陽電池の持つ長所を以下にまとめます.
太陽電池はp型半導体とn型半導体の2種類の半導体を接合させます. 下に示す図はpn接合半導体のエネルギー帯図です.エネルギー帯図(単にバンド図とも言う)は,図の上方に向かって電子のエネルギーが高くなるように描いてあり,半導体内の現象を理解するのに便利です.
太陽の光がpn接合半導体に入射すると,価電子帯に存在する電子が,光の持つエネルギーを得て伝導帯に上昇し,自由電子となります.この現象を励起と言います.それと同時に,価電子帯には電子が抜けた穴つまり正孔が発生します.励起された電子は拡散及びドリフト(接合部に生じた電界の影響より電子・正孔が移動する現象)によりn型領域へ,正孔はp型領域へ移動し,図のように電子と正孔の集合が生じます.
図下部のように,n型半導体とp型半導体を,導線で接続すると電子と正孔が流れ出し,電流の流れが生まれます.
太陽電池は大きく乾式型と湿式型に分類され,乾式型はSi太陽電池と化合物太陽電池などに分類されます.
単結晶Si太陽電池
エネルギー変換効率が高いのが特長です.しかし,純度の高いSiを使用しており,材料コストが高いことが難点です.また製造工程が複雑であり,製造時に必要なエネルギーも多く掛かってしまいます.
多結晶Si太陽電池
結晶の粒径が数mm程度の多結晶シリコンを材料としています.単結晶Siと比較すると,エネルギー変換効率は劣りますが,材料や製造時に必要とするコストは抑えることが可能です.
アモルファス(非結晶)Si太陽電池
エネルギー変換効率は結晶系の太陽電池と比較すると劣りますが,0.5mm程度の薄膜で発電が可能なため,コストを低く抑えることができます.また,大面積化が可能なため既に実用化がなされております.光劣化により,わずか数年で特性が低下してしまうという致命的な問題を抱えているため,大規模な実用化は困難です.
薄膜Si太陽電池
Siは光吸収係数が低いため,入射光を吸収するためには膜厚を厚くする必要があります.そこで,太陽電池の表面構造や中間層を工夫することで,入射光の利用率を高めたものです.使用する材料や製造に必要なコストを抑えることが出来ます.比較的新しい技術で,今後,更なる改良が期待されております.
GaAs系太陽電池
禁制帯幅が約1.4eVと太陽光のスペクトルに良くマッチしています.そのため,理論効率が非常に高いのが特長です.現在,特に高効率な太陽電池を必要とする宇宙用に向けて,研究が行われております.
CIS(カルコパイライト)太陽電池
カルコパイライト構造という非常に硬い構造を持っています.禁制帯幅が約1.5eVと,こちらも太陽光スペクトルと良くマッチしております.
色素増感太陽電池
乾式太陽電池と比較すると,その電気特性は劣りますが,低コストである他,軽量でありセルに対して着色が可能という特長を持ちます.実用化にはまだまだ至りませんが,盛んに研究開発が行われており,将来,有望視されています.
日本は世界で最も太陽電池による発電量の多い国です.環境に対しての関心の高まりもあり,近年,太陽電池の売り上げは大きな伸びを見せています.しかし,全体の発電量における太陽電池の割合は 依然低く,そのフィールドは狭いのが現状です. 太陽電池を導入し,“元を取る”には15〜45年掛かると言われており,導入時の経済的な負担が大きいことが普及を抑制していると思われます.
以上のような現状を打破するためには,やはり更なるコストの低下が必要となります.Si系の太陽電池は太陽光を吸収するために,膜厚を厚くする必要があり,材料コストが多く掛かってしまいます.そこで,多くの材料を必要としない薄膜の太陽電池の研究開発が盛ん に行われております.薄膜太陽電池はまだ研究段階のものがほとんどですが,近い将来には次世代太陽電池として,太陽電池の普及に大きく貢献するでしょう.