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CuInS2である理由

CuInS2のメリット

構造と製作方法

現状と今後の課題


CuInS2である理由

今日,太陽電池に用いられる材料はSiがほとんどです.Siは光吸収係数が低く,効率よく光を吸収するには膜を厚くする必要があります. そのため材料コストが掛かかってしまいます.また,製造工程が複雑で,こちらもコスト高につながります.これらが原因で太陽電池の普及率が 伸び悩んでいるのです.

当研究室で研究を行っているCuInS2を光吸収層として利用した太陽電池は, 以上のような現状を打破しようとしたものです.つまりSiと比較して,太陽の光を効率よく吸収することができ,膜 厚を薄くすることが可能です.また製造工程もさほど複雑でなく, 製造コストも低く抑えることが出来ます.CuInS2薄膜太陽電池はその他に も多くの利点を持ちます. 次節で述べたいと思います.

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CuInS2のメリット

CuInS2の持つ利点を以下に示します. 

カルコパイライト構造を持ち,禁制帯幅は光吸収材料として適している 約1.50 eVです.
 
  ※カルコパイライト構造(図1)は,禁制帯幅の制御が組成を変えることで可能です. つまり,組成を上手く調整するこで,太陽光スペクトルに上手くマッチさせることができす. そのため,太陽光スペクトルに適合する波長範囲での光吸収係数が非常に高くことが大きな特長です. また,放射線に対する劣化が極めて小さく,宇宙用の太陽電池として応用が期待されています.
 
構成する元素に有害な物質を含まず,廃棄の際,環境を汚染しません
 
光による劣化が無く,高い信頼性があります
 
稀少元素を必要としないため,資源的な制約がありません

 

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構造と製作方法

@上面電極(In2O3)
電気を取り出す部分です.酸化インジウム(In2O3)という材料を使用しています. In2O3は透明導電膜であり,光を透過します.スパッタリング法によって堆積させ,膜厚は約150〜200 nmとします.
 
A窓層(CdS)
硫化カドミウム(CdS)というn型化合物半導体を使用しています. 透明導電膜から入射した光を,光吸収層まで透過させる役割を担います.また,In2O3を堆積する際の衝撃を緩和し, 光吸収層への衝撃を少なくするというバッファ層としての役割もあります.溶液成長法で堆積させ,膜厚は80〜120 nmとします.
 
B光吸収層(CuInS2)
入射光を吸収します.CuInS2は,真空蒸着法により CuInを交互に3層ずつ,計6層堆積させます.その金属層を500℃以上の高温下において,硫化水素(H2S)ガスと反応させ(硫化処理), CuInS2が生成されます.
 
C底面電極(Mo)
上面電極と同様,電気を取り出す部分です.モリブデン(Mo)という金属を用いています.MoCuInS2と十分なオーム性接触を得ることができ, 融点が2623℃と非常に高いという理由から用いております.堆積方法も,上面電極と同様にスパッタリング法を用いています.膜厚は約1.0 mmとします.
 
Dガラス基板(ソーダライムガラス)
この上に膜を堆積させます.CuInS2と熱膨張係数が近いソーダライムガラスを使用し ます.
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現状と課題

現在,報告されている最高光電変換効率はZnO/CdS/CuInS2/Mo/glass構造のもので12%程度です.禁制帯幅が太陽光スペクトルにマッチしていることから理論変換効率は30%以上ですが,実際の変換効率は低く,まだまだ研究段階であるといえます.このように変換効率が向上しない理由として,以下の問題点が考えられます.

CuInS2Moの密着性が悪い
  CuInS2Moは密着性という点で相性が悪く,CuInS2膜が剥がれてしまうことが問題視されています.CuInS2膜成長時に生じる応力や,CuInS2Moの熱膨張率の違いが原因と考えられます.対策としては,硫化時の温度パターンを調整したり,CuInS2Mo間にGa等の金属を挿入するなどして,改善を試みております.
再現性が低い
   再現性が低いために,CuInS2膜の品質や,太陽電池の各種パラメータにばらつきが出てしまいます.実験を繰り返し,最適な製作方法を探ることが課題であります.

この他にも生産技術という点において,まだまだ発展途上です.光電変換効率が15%を達成されれば,実用化に向けての研究が進められるでしょう.


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